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スペシャルインタビュー! 猪野 秀碧 氏が「足立の花火」を語る! 日本でいちばん 濃密な花火

  • 2019年6月27日
  • 2021年12月22日

だい41かいあだちのはなびいんたびゅー

初めて僕らのチームが「足立の花火」の演出に関わったのは3年前。今回は4回目です。
僕が花火大会の演出を手がけているのは足立区だけ。初めての分野でもありました。

まず意識したのは、足立区の理念である「協創」というキーワード。「共につくる」ということです。
例えば、音楽に合わせてサイリウムや携帯電話など「光るモノ」を振るという演出ですが、ライブでは普通のこと。
でも、花火大会での演出としては珍しい。
しかも、年代を問わず参加できます。
みる側とつくる側が「一緒に花火大会をつくっているんだ」と体感してほしいと考えました。
継続は力なりというか、昨年は自分でライトを持参してくれるひとも目立ちました。
積極的に楽しんでもらえて嬉しいです。

演出を手がけた中で新鮮だったのは、花火師さんと直接話せたこと。
音楽フェスのひとつのパートとして花火の演出をした時は舞台演出家さんをはさんで話していました。
「足立の花火」では直接花火師さんと話したことで、思いの強さや考え方から、エキスパート度が伝わってきました。
だからこそ、選曲と大枠のコンセプトだけ伝えたら後は任せようと思えた。
「足立の花火」を手がけている花火師さんは非常にレベルが高いプロフェッショナルな方々です。
抜群な選曲をすれば素晴らしい花火で応えてくれると信じています。

これまでプロデュースした音楽フェスの演出では、花火は切り札的な存在。
プロデュースした「TOKAI SUMMIT」(東海地方で夏に開催される大型野外フェス)で条件を一つ一つクリアして3年目で花火を打ち上げたことがありました。
結果、動員数が増加。「フェスに来たら花火も観れた」という特別感があったようです。
「足立の花火」の場合は「花火を観に来たら音楽も聴けた」ですね。

歓声を呼ぶ! 音楽と花火の調整は0.5秒単位

「足立の花火」の魅力のひとつは音楽とのコラボレーション。
花火の特性をきちんと考えた上で選曲をしています。
より多くのひとが知っている「ヒット曲」であるだけではなく、花火に合う楽曲を選ぶことが大事です。
ボーカルや構成の抑揚があったり落差の激しい楽曲だったり、様々な要素が展開される楽曲です。
楽曲は特定の年代だけが楽しめるものではいけない。
その一方で、観客の皆さんにカルチャー度の高さや驚きを感じて欲しい。
とかく僕らはエッジの利いたものを選んでいく、そうしないと生き残っていけないという世界でやっています。
なので、楽曲の選択は毎回苦慮しています。
僕らは毎年ギリギリまで調整して、他にも正解があるんじゃないかと常に考えています。
ものづくりをするということはずっとこういう状態だと思います。

昨年、レーザーの演出に合わせたのはエレクトロニックな音楽で人気のグループの楽曲でした。
この選曲も、きちんと音楽のことを分かっていないとできないという自負があります。
単純に選ぶとロックを当てがちですが、それははずす。
レーザーはロックではなく打ち込み系のコンピューターミュージックが絶対合うので。

そして、花火と音楽の関係で最も重要なのはタイミング。
「間」だけは絶対にはずせません。この点は花火師さんと何度も確認します。
過去にはリハーサルの時に0.5秒単位で調整したことも。半拍ずれると、それは観客に伝わります。
違和感があると「おおっ!」という声は上がりません。

1時間で約1万3000発がノンストップで打ち上がる、これだけ濃密な花火は他では観ることができません。
この濃さは日本でいちばんと言ってもいい。
音楽や演出は脇役、メインは濃密な花火です。
どんなに素晴らしい演出でも花火を超えてはいけない。
なので、さりげなく高度なテクニックで花火を盛り上げることを考えています。

「足立の花火」は僕らが関わる前から音楽に合わせて花火を上げていました。
それは今も変わっていません。
僕らが関わってから変わっているとすれば演出の裏側で深く考えて「計算」していること。
さらに、計算を観客が感じないようにする。計算を「消す」作業が必要です。

「消す」とは仕上げの作業。
音楽アルバムの制作でいうと「マスタリング(音質や曲間の最終調整)」です。
最後に一観客になって、感情を揺さぶられるかチェックします。
スタジオの最高級の機器ではなく購入してくれるひとたちが聴くメディアで聴くのです。
昔で言うと中学生の気持ちになってラジカセとか。
その中で細かく調整して「計算」を消していく。
「足立の花火」でも同じように確認します。
そこで「プロ」ではなく「素人」として自分がOKを出せるかどうか。
計算が見えてしまうと絶対に感動は起こりません。
それを自分の感覚で確かめます。

 ロックにレーザー、忍者も? 注目はココ!

今年のオープニングは「NINJA」がテーマ。
東京2020オリンピック・パラリンピックというキーワードから、老若男女、国内外問わず伝わる日本的な演出として考えました。
世界でも有数のパフォーマンスチームが出演予定です。
ただ、忍者ショーは点火前の期待感を高めるもの。
登場の驚きはあっても、花火が主役になることは変わらないバランスを模索しています。

楽曲は、足立区からのリクエストでロックを取り入れます。
花火とどこまで合うかは未知数です。
花火とロックは押しの強いもの同士なので合わせるのが難しい。
そこを心地良く、スムーズできるか?今、頑張っています。

昨年ご好評いただいたレーザーでの演出も、昨年と同じではありません。
今回初めてのひとはもちろん、前回観てくれているひとにも驚いてもらいたい。
ですが、とにかく今年も素晴らしかったと思ってもらえるのがいちばん。
皆さんがどう感じるか? 当日、会場で体感してください。

猪野秀碧(いの ひでみ)氏プロフィール

多くのメジャーレーベルで数多くのトップアーティストの制作、宣伝を手掛ける。
エイベックス・グループでは「tearbridge production」の設立、運営に携わり、多くのアーティストやクリエイターのマネジメント、ライブツアー、イベント、夏フェス等のプロジェクト・プロデュースと部長職を務める。
2007年には同チームとして日経エンターテイメント誌「日本を動かす100人」に選定される。
2002、2003年エイベックス会長賞。2006、2007年BMGジャパンヒット賞。
2006、2007年ユニバーサルミュージックヒット賞を受賞。
2014年10月、エイベックス・グループ内に新設された「ビジネス・アライアンス本部企画開発部」統括部長としてビジュアル・プロデュース、インターネット・ブロードキャスト、プラットフォーム制作、デジタル・マーケティング等をまとめる。
2019年現在、avexエンターテイメント企画開発部ジェネラルマネージャー。
足立区とのワークとしては「足立の花火」演出の他、「あだちワンダフルCMグランプリ」審査員、足立区公式アプリ「アダチさん」開発・運用も手がけている。
http://avex.jp/aba/

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