千住在住の編集者が語る「足立区千住」の魅力とは?
- 2017年7月14日
- 2021年12月22日
大盛況のうちに幕を閉じた「第39回足立の花火」。
今年も、荒川河川敷(千住地域)で打ち上げを行いました。
今回は、「足立の花火」の開催地である「千住地域」の魅力を、千住をこよなく愛する吉満明子さん(株式会社センジュ出版代表取締役)が語ります。
数ある魅力の中から、千住の「いろは」の「い」を吉満さんがピックアップしてご紹介♪
花火大会当日だけでなく、何度も訪れたくなる千住のまち。
まずは花火打ち上げ会場までの道中を、千住の魅力に触れながら歩いてみてください。
時間をかけたくなるまち・千住
はじめまして。
2015年に足立区千住で出産を機に出版社を立ち上げ、事務所の一角で6畳のブックカフェを開いている、センジュ出版代表の吉満です。
今回はお読みくださる方々のお時間を少しだけお借りして、
このまちの魅力を住民(といってもまだ11年目のひよっこです)の立場からお伝えさせていただこうと思います。
千住の魅力は主に5つ。本当は他にも挙げたいことがたくさんあるのですが、今回はまずいろはの「い」についてということで、
選びがたいながら、ひとまずまちの大切な特徴をお伝えさせていただきます。
おもてなしは赤提灯から夜景の見えるフレンチまで
千住には飲食店が多く立ち並んでいることがよく知られています。
チェーン店でない地元の名店がさまざま軒を連ねていることも特徴ですが、この飲食店街のにぎわいはいつから始まったか、まずは少しご紹介します。
実は千住のまちが活気づくことになったきっかけは、時の将軍、徳川家康が江戸に入った時代までさかのぼります。
1594年に隅田川に千住大橋が架けられてからもう少し後の1625年のこと、江戸から奥州や日光に向かう街道が整備され、その中で千住は最初の宿場町となりました。
旅人の疲れを癒すために宿屋やお茶屋に人々が集った背景から現在まで続いてきた歴史が、今の飲食店の多さにつながる一つの大きな理由でもあるわけです。
現在の千住を見ると、午前中から飲める赤提灯のワイガヤ酒場をはじめ、高層ビルの20階・高さ80mからの眺望も楽しめる本格派フレンチレストランまで、いずれも粒ぞろい。
さて今日は、誰と、どんなお食事を楽しみますか?
千住のまちはあなたの笑顔の心強い味方です。
いつもの乗り換え駅を降りれば新しい出会いが
千住のまちを通る「北千住駅」。
北千住は東武スカイツリーライン、JR常磐線、東京メトロ日比谷線・千代田線、つくばエクスプレスの4社5路線が乗り入れ、一日の乗降客数も毎年必ず上位にランクインするほど利用者の多い駅になっています。
これらの電車に乗ると、直通の乗り換えなしで、横浜、東京、渋谷、上野、銀座、六本木などから一本で北千住に到着することが可能。そのうえ羽田空港からは、北千住駅行き直通リムジンバスも出ています。
これほど交通アクセスのいい駅でありながらも、乗り換えなどで利用しながら実は降りたことがないという方も少なくないのだとか。実際、私のお店にいらっしゃる方も「初めて北千住で降りました」というお客様が数多くいらっしゃいます。
駅から歩いていらっしゃる道すがらに商店街の様子や飲食店の数などに驚かれ、行き帰りに買い物や食事を楽しまれる方も少なくありません。
いつもは通り過ぎるだけだったこの駅から降りて、少しまちを歩いてみてください。
きっとそこでは、新しい出会いがみなさんを待っています。
クラフトマンたちから一点物を買える喜び
千住は駅ビルの商業施設から商店街の個店まで、その品揃えがバリエーション豊富で、遠くにわざわざ出かけなくてもまちの中の買い物ですべてのことが足りてしまうのも魅力のひとつです。
中でもここ最近は、丁寧なもの作りを受け継がれている若いクラフトマンがちらほら現れています。
おすすめしたいのは、作り手の作業場とアトリエが一体になったお店。
そこでは、作る人の表情、手元、会話なども含めて、その一点の製品を購入することができます。
千住地域は鞄、靴、革小物など皮革製品のメーカーが多いことで知られていますが、
最近では天然無垢の木工製品のアトリエや陶芸のアトリエ、自家製ビールを出すブルーイングなど、すっかり作り手が身近なまちとなりつつあります。
ぜひ、その作品が作られた物語とともに、一つひとつを手にとって確かめてみてください。
散歩するなら時間を感じる建物と時間に迷える路地と
千住には古い建物がいくつも残っています。
まずは千住の歴史を語る上でアイコンのような存在になっている、宿場通り沿いの「横山家住宅」。
地漉きの紙問屋を営んでいた旧家で、1855年に建てられた木造建築は、二階建て細格子造り。
足立区の有形文化財に指定されています。
また、葛飾北斎、森鴎外、夏目漱石がその作品の中に記した、骨つぎの名医、「名倉医院」。
医院の前には診療を受ける患者さんが列をなし、近くには患者さんのための宿屋も数多くあったとのことで、その腕前がうかがえます。
1848年から1985年前後まで使われてきた診療室は、こちらも足立区の有形文化財です。
他には1917年に建てられた洋館の医院のイメージを引き継ぐように1982年に建てかえられた、今も現役の「大橋眼科医院」もSNSで写真映えします。
さらには古民家を改修したカフェやオフィス、ヘアサロン、立ち飲み屋、ゲストハウスなども点在。
ふと気づくと壊されていたり、建て替えられていたりして失われていくことの多いまちの景色の中で、こうした長い時を吸収した建物は、時間の延長にある「いま」をたしかに感じさせてくれる、道しるべのようにも思えてきます。
そして、そんな建物へといざなってくれるのが、細い細い路地。
江戸時代は商家の間口に対して税金が課されていたため、
間口を狭くして奥に細長いつくりになったことで、細い路地が数多く生まれました。
この路地裏を歩くと、石畳に寝転んでいる猫に遭遇することもしばしば。
日常の中のエアポケットのような路地裏めぐりも、ぜひお楽しみください。
夏を彩る大輪の花火も上がる荒川土手のやさしさ
そして千住になくてはならないのが、荒川の流れる風景。
土手に腰掛け、マラソンする人やボールを追う子どもたちや、ゆっくり散策する老夫婦を眺めていると、
大きな存在に包まれているような安心感に肩の力が抜けてきます。
悲しいことや悔しいことを何度この流れに流してもらったかわかりません。
千住地域を流れる荒川下流部は1930年に完成した、荒川放水路という人工河川で、繰り返し起きていた洪水被害を防ぐ治水対策で生まれた河川です。
この橋の上にかかる橋は千住新橋。1924年に完工し、翌年6月20日に開通したことを記念してそれから毎年8月に花火を上げるようになったのが「千住の花火大会」。
この花火大会が、今の「足立の花火」の前身です。現在「足立の花火」は、毎年7月に、東京近郊で夏に行われる花火大会の中でもっとも早く開催され、あの胸に響く大きな花火が約1万2000発、夜空に鮮やかに花開いて、夏の訪れを彩ってくれます。
そんな花火大会ももう来週。ぜひ花火の前後に、そしてその後も、千住のまちを楽しんでみてくださいね。
(文・写真:株式会社センジュ出版 代表取締役 吉満明子)
吉満明子(よしみつあきこ)さん
千住大川町在住、一児の母。2015年、千住3丁目に株式会社センジュ出版を設立。
事務所の一角の6畳和室スペースにちゃぶ台のあるブックカフェ「SENJU PLACE」を運営。
まちのイベントのプロデュースも多数手がけている