【あだちミステリーハンター】五反野のコスプレスタジオに潜入せよ!
- 2018年10月18日
- 2021年12月22日
最近、妙な噂を聞く。
足立区の東武スカイツリーライン「五反野駅」付近に、奇抜な服装をした若者をよく目にするというのだ。
五反田? いやいや五反田(ごたんだ)じゃないよ。 五反野(ごたんの)だよ。
ここはとても大事だ。
今回の記事中にも何度か同じことを書くはずだ。
兎にも角にも、これはミステリーだ。五反野に行ってみることにした。
奇抜な服装の人たちが集まる!? 五反野の今とは!?
五反野駅に降り立ったわたしこと「ミステリーハンター」は、周辺捜査を始めることにした。
すると、いくつかの有力情報を手に入れることができた。
やはり情報は足で稼ぐ。これがわたしのモットーだ。
「なんか廃工場に派手な格好した人たちが入っていくのを見たわ」
「カメラマンっぽい人を多く見るようになったね」
「11月の五反野フェスティバルの関係かな? 去年はアニメキャラクターのコスプレをした人や着ぐるみを着た人がたくさん集まったよ!」
わたしはピーンときた。正直謎はまだまだ残るが(廃工場とか五反野フェスティバルとか)、このミステリーは「コスプレ」と「スタジオ」というキーワードで説明がつくはずだ。
さっそくわたしは「五反野 コスプレ スタジオ」とインターネットで検索してみた。
やはり情報はインターネットが早い。
場合によっては、文明の利器に頼るのがわたしのモットーだ。
検索結果で出てきたのは…… 「aiRoute studio」 早速、アポをとり、お話を伺わせていただくことにした。
廃ビルの中はめくるめく夢世界が広がっていた
aiRoute studioに着くと、まるで廃ビルだ……。
一体、ここでなにが行われているのだ? と思っていると、スタッフのMさんが出迎えてくれ、スタジオの概要を説明してくれた。
aiRoute studioは、2013年に設立したコスプレスタジオ。
いまではコスプレスタジオも増えてきたが、ここは先駆けの存在だと言う。
近年ハロウィンブームの影響もあり、漫画やアニメ、ゲームのキャラクターになりきってイベントに参加したり、写真撮影をするコスプレイヤーも一般的になってきている。
しかし、なかなか“撮影する場所”は少なかったのだ。
「通常のスタジオとの違いは、ひとつのスタジオにロケーションがたくさんあることですね。例えば、図書館や教室、廃墟、和室にゴシックエリアやアラビアンエリア、魔法使いエリアなど複数のシーンで撮影することができます。週末には100人以上の方がご利用されることもあります」(Mさん)
お話を伺いながら、aiRoute studio(本館と別館の2棟がある!)をご案内いただいたのだが、ひと部屋変わるごとに別世界に足を踏み入れたような感覚に陥ってしまう。
す、すごいぜ。廃ビルのなかは、多彩な世界が入り組んだ迷宮だったのだ。
「それぞれの部屋は全部手作り、DIYなんです。オーナーがハウスメーカーに勤めていた経験もあり、使われていない廃ビルをリノベーションしたのが始まりなんです。五反野には、aiRoute studioの本館と別館の他に、廃墟〜ゴシックに特化したai Radour、廃工場をリノベーションしたai Ruin studioの3つのスタジオがあります」(Mさん)
聞き込みをしたときの廃工場とはこのことか、と独り合点しつつも、驚いたのは五反野だけで3つのスタジオを運営しているという事実。
五反野は少しずつコスプレイヤーにとってフレンドリーな街に変貌しつつあるのだ。
五反野フェスティバルとのコラボレーション
少し前まで一般的とはまだ言えなかったコスプレだが、いまではインターネットの普及や年2回の「コミックマーケット」でその文化は拡大し、名古屋では毎年「世界コスプレサミット」が開催されるなど、いまや世界的に認知される日本のカルチャーとなっている。
五反野も例外ではなく、毎年11月に開催されている「五反野フェスティバル」に2017年からaiRoute studioも参加しているというのだ。
「『五反野フェスティバル』のように徐々にコスプレイヤーも街イベントなどに招待されるようになってきました。非常に喜ばしいことですが、まだまだ課題もあります。例えば、ひとりがマナー違反をしてしまうことで、その場にいる人にとって、コスプレイヤー全体の印象が悪くなってしまうんです。運営側に入っている我々が、コスプレイヤーも街のみなさんも楽しめるようにしていきたいですね」(Mさん)
非日常的な空間で、二次元の世界から飛び出してきたようなMさん……というなかなか味わい深いシチュエーションだけに、Mさんの真摯な対応にハッとさせられる(ちなみに本日は『ヒプノシスマイク』の神宮寺寂雷というキャラクターのコスプレ)。
昨年の「五反野フェスティバル」では、街のみなさんにスタジオの利用券をプレゼントしたエピソードも披露してくれた。
「お子様連れの方がかなり遊びに来てくれました。スタジオには有名アニメ映画や人気テーマパークの世界観に近い部屋もあり、人気でしたね。ハロウィンが一般的になったことで、年に1回は仮装やコスプレをするという方が増えました。せっかく買ったり、作ったりした衣装ですので、スタジオでもう1回着て楽しむという方が多いですね。あとは“SNS映え”がする写真を撮りたいときなんかにもおすすめです」(Mさん)
子どもの頃にアニメのキャラクターになりきって遊んだ経験は誰しもがあるはず。
シャツを着て、ジャケットを羽織ると気持ちがシャキッとなったり……コスプレは誰もがもつ欲求のひとつなのかもしれない……。
と渋い顔で考えていると、Mさんは 「ただの自己顕示欲ですよ(笑)」 とこちらの意図を察するように、笑顔で答えてくれた。
“田”じゃない!“野”だ!
謎は解けたし、いい話も聞けた。
今日も足立区のミステリーをひとつ解決した。Mさんにお礼を伝え、ビルを出ようとすると、見知らぬ男性が立っているではないか……!
「五反田じゃない! 五反野だ!」
こんなこと言うのは、きっと五反野の住人だ。
しかも、かなりのベテランだ。わたしの勘がそう告げている。
「山田さん!」(Mさん)
知り合いかい……。
この方は五反野駅近くで銭湯を営んでいる山田知孝さん。
「五反野フェスティバル実行委員」のひとりで、どうやら昨年のaiRouteさんとのコラボレーションを実現したのが、この山田さんらしい。
「なんか五反野に不思議な格好をしている人が増えたな、と感じていたのです。なにかが起きる予兆ではないか、と思っていました。そこである日、彼らがどこに向かうのか眺めていたんですよね。すると、もう操業していない廃工場に入っていくではないですか!? 何をする気だ!? 五反野の街は俺が守る!と思ったのがきっかけです。」(山田さん)
当時を臨場感と五反野愛あふれる内容で説明してくれる山田さん。
わたしとまったく同じ行動原理で動いており、妙な親近感が湧いてくる。
そんなこんなでaiRoute studioの存在を知った山田さんは、「これだ!」と閃いたそうだ。
「五反野フェスティバル」の主催者である商店街を必死で説得して、仮装コンテストの開催にこぎつけたというのだ。
「今年は去年よりさらに規模を拡大します。参加してくれたコスプレイヤーさんが五反野の様々な街並みで撮影を楽しんでもらえるように、現在小学校や商店街のお店にも許可をいただいている最中です」(山田さん) 「今回のコンテンストは、投票者が子どもになりますので、どのキャラクターのコスプレをするのかが勝負を分けそうです。わたし? わたしは当日は、自転車に乗って、誘導したり、見回りしたりしていると思いますよ(笑)」(Mさん)
2018年の「五反野フェスティバル」は、11月10日(土)に開催。
仮装参加者全員(事前募集制)に五反野の駅前商店街で利用できる商品券1,000円分とaiRoute studio利用券2,000円分がもらえる。
少しずつ五反野は変化を遂げようとしている。
山田さんは「顔を合わせたら、挨拶が必ずある活気のある街にしたい」と仰っている。
Mさんは五反野の魅力を「どこにでもある人々の生活が感じられる街」だと言う。
私見ではあるが、ふと街を歩きながら横に視線を移すと、ゲームのキャラクターやアニメのキャラクターが歩いている。
そんな下町風情が残った“日常と非日常が共存している街”になったら素敵だな、と思う。
もし興味を持っていただけたなら、まずは11月10日(土)の「五反野フェスティバル」に足を運んでみてはいかがだろうか。
五反野フェスティバルの情報はこちらから!
五反野駅前通り銀座会:https://www.55gotanno.com/
あだちミステリーハンター/中西英雄
取材協力/aiRoute studio、山田知孝さん(五反野駅前通り銀座会)