日本でも珍しい要素がいっぱいの電車!「東武大師線」は、今日も下町を元気に走ります
- 2017年9月11日
- 2024年2月26日
足立区には、東京23区内では、いや日本全国を見渡しても、非常に珍しい電車があるのをご存知でしょうか?
その名は「東武大師線」。
東武スカイツリーライン線(東武伊勢崎線)「西新井駅」と1年を通して参詣客で賑わう西新井大師がある「大師前駅」を結ぶ路線として、地元の方に愛されています。
しかし、足立区在住ではない方には、馴染みのない路線ではないでしょうか。
では、どんな路線・電車なのか?
今回は「東武大師線」の歴史や魅力に迫ります!
鉄道黄金時代に生まれた総路線距離たった1.1kmの「大師線」
「東武大師線」が開業したのは、1931年(昭和6年)。
当時の鉄道は、動力が蒸気から電化へと移り変わる時期であり、国鉄では長距離を移動する超特急「燕」が誕生。また東武鉄道、西武鉄道、東京急行電鉄、阪急鉄道など私鉄も次々と全国で路線を敷設した鉄道の黄金時代でした。
そんななか、「東武大師線」は、当初「西板線(にしいたせん)」という名称で西新井駅と大師前駅を結ぶ総路線距離わずか1.1kmの路線として誕生したのです。
あれ?そんな黄金時代になぜ短い距離の路線が?
そもそも路線名が違うよね?
疑問もごもっともでございます。
これが「東武大師線」の数奇な歴史の始まりだったのです。
時代に翻弄された幻の路線「西板線(にしいたせん)」の夢を乗せて走るよ
もともと「東武大師線」は、西新井と上板橋(かみいたはし)を結ぶ総路線距離11.6kmの路線が計画されていました(西新井→大師前→江北→新鹿島→足立新田→赤羽→小豆沢→志村三丁目→若木西台→上板橋(かみいたはし))。
東京の東西を走る東武伊勢崎線と東武東上線を結び、当時は田園地帯であった沿線の開発が目的でした。
なんと、この沿線計画はいまの環状七号線のルートとほぼ同じ!
都内を東西に横断する路線を90年も前から計画していたとは、東武電鉄さんの先見の明が光ります。
“西”新井と上“板”橋から一字ずつとったのが「西板線(にしいたせん)」というわけです。
しかし、計画が生まれた翌年に起きた「関東大震災」のため、歯車は少しずつ狂っていってしまいます。
各自治体の復興計画と用地買収が被ったことや、路線予定地の急速な市街地化などにより、当初予定した建設費よりはるかに高額になったため、計画は白紙に…。
用地買収が実現していた西新井駅と大師前駅の区間のみが1931年に開業することとなりました。
「東武鉄道65年史」では、“この西板線(にしいたせん)計画中止は東武鉄道の発展史唯一の遺憾事”と記載されており、プロジェクトの変更が東武鉄道にとってもいかに悔しかったかが伝わってきます。
1947年(昭和22年)に「大師線」に改称されるまでの16年間、「西板線(にしいたせん)」として運行を続けていたことも、多くの人の夢を乗せていたことが理解できるエピソード。
総路線距離1.1km。駅数2。
たった2車両編成の「大師線」は、大きなロマンをいっぱい詰め込んで、下町を今日も走っています。
23区内に無人駅!改札、券売機もない「大師前駅」
全国の短い路線でも3本の指に入ると言われる「東武大師線」は、1968年(昭和43年)に、環七通りの道路拡幅のため、「大師前駅」が移転することになり、短かった路線距離がさらに100m縮まってしまい、総路線距離は1kmに。
「もともと『西板線(にしいたせん)』が環七通りの役割を担うはずだったのに!」
と全国の「東武大師線」ファンや利用客の皆様は歯噛みして悔しがった……はずなのです。
旧駅は、現在の駅から環七通りを挟んで、ちょうど東武ストアのあたりにあったとのこと。現在、往時を偲ぶものはありませんが、近隣住人の方はよく覚えてらっしゃって、気さくに色々なお話をしてくれ、「東武大師線」がいかに愛されているかがわかります。
そんな「大師前駅」は、非常に特徴的な鉄道駅になっています。
・東京23区内では、珍しい無人駅
・東京23区内では珍しい単線区間である(他には京成金町線のみ)
・東武線では唯一、踏切が存在しない路線
・自動改札機がない
・自動券売機がない
・もちろん自動精算機もない
これって一体どうやって乗ればいいのでしょうか?
「大師前駅」に仕組みはこうなっていた!
「切符が出てこないというお問合わせや慣れていないお客様にご案内が必要なケースが多いです。『無料ではないのか?』と思ってしまうお客様もいらっしゃいます」(東武鉄道西新井駅長さん)
自動券売機がなく、自動改札機もなく、無人なので、駅からそのままホームに入っていける「大師前駅」。
初めて訪れた人は、必ず戸惑います。
実は「大師前駅」の機能は、もうひとつの駅「西新井駅」に集約されているのです。
「西新井駅」には「東武大師線」の“中間改札”が存在し、ここで切符を購入することになります。(※ICカードの場合は、ここでタッチ!)
逆に「東武スカイツリーライン」で「西新井駅」から「東武大師線」に乗り換える場合も同様で、“中間改札”で精算を済ませて、「大師前駅」ではそのまま改札を出る仕組みとなります。
このシステムは全国でも珍しく、文章にすると複雑!と感じられるかもしれませんが、一度乗車していただくと、すぐにご理解いただけるはず。
しかし、「東武大師線」の魅力は珍しいだけではありません。
東武鉄道の西新井駅長さんは「東武大師線」の魅力をこう語ります。
「以前に東武鉄道の主力だった8000系の車両が、都内では亀戸線と並んで現役で走っています。『東武大師線』は、ワンマン運転ですので、車両もバスのようにワンマン運転の仕様になっていて、車内放送は自動放送です。どことなくバスのような雰囲気を味わえるのもご愛嬌ですね(笑)。あと、西新井駅を発車すると、すぐ高架になります。そのときに左側の高架下には、都内では珍しく畑で農作業をする風景が見えることもあります」
「東武大師線」は、総路線距離や歴史、駅のシステムが珍しい路線であり、乗ってみるとレトロで下町情緒あふれる風情が楽しめてしまうのです!
それだけではありません!
「大師前駅」は無人駅ですが、エレベーター(平成29年11月下旬まで更新工事のため休止中)やエスカレーターなどのバリアフリー化されており、駅構内には、「子育て応援パートナー」企業として保育施設があります。
お子さんを保育園に預けてそのまま出勤することが可能です。
ただただレトロなだけではなく、お年寄りやファミリーにとって利用しやすい環境になっています。
いまが「東武大師線」乗車のチャンス!リバイバルカラーで歴史を感じる2分の旅を!
2駅1kmを結ぶ「東武大師線」の歴史はいかがでしたでしょうか?
23区では珍しい2車両編成の車両や無人駅など、下町情緒たっぷりの「東武大師線」。
「西板線(にしいたせん)」が実現していれば、という“if”のロマンもあり、2駅を1日に何度も往復する姿がとても愛らしいのです。
現在、東武鉄道では、昭和30年代に採用されていたカラーリングを再現したリバイバルカラー車両の運行をしています。昨年から登場したリバイバルカラーですが、今年は、グリーンの車体にサブウェイクリーム色のラインが入った車両と、イエローの車体にオレンジのラインが入った車両が登場。
レトロなデザインは、下町を走る「東武大師線」ともピッタリで、見ているだけでもタイムスリップをしたような感覚になります!
「現在、昔の塗装を施した8000系のリバイバル車両が運行中です。色違いで3編成があり、“特別な色の車両に出会えると、幸せになる”という噂があります」(東武鉄道西新井駅長さん)
おお!なんということでしょうか!
「東武大師線」は、都内でも有数のパワースポットと言われる「西新井大師」を結ぶ路線なので、たしかにリバイバルカラーに出会えるとご利益がありそうですね!
「東武大師線」に乗車したい!という方は、ぜひこのチャンスを逃さないでください。
リバイバルカラーに出会えたら、ラッキーです♪
下町再発見、昭和の匂いを色濃く残す2分1kmの旅をお楽しみください!