【あだちミステリーハンターが行く!】舎人には昔話がいっぱい!恋愛成就にも効果あり!? 毛長姫にまつわる悲しい恋の物語【前編】
- 2018年3月23日
- 2021年12月22日
東京23区最北端に位置する足立区。
まだまだ足立区のことを知らないわたしは、週末ともなると近くを散策するのが日課となっています。
足立区は恵比寿、吉祥寺、品川にはない良さがあると私は確信しています。
おっと、自己紹介が遅れました。私は「あだちミステリーハンター」。
足立区にある謎やミステリーを個人的に調査している者です。
今回は舎人周辺に来ています。
春には多くの人が訪れる「千本桜まつり」で有名な舎人公園などがある地域です。
あてもなく散策をしていると、奇妙なタイルを見つけました(※上記画像)。
「黒い髪」「水辺」……。
なにやら、ミステリーのにおいがプンプンしてきました。
タイルの絵から察するに、どうやら舎人に伝わる昔話や伝説のようです。
わたし、「あだちミステリーハンター」は、上記のタイルを頼りに、調査を開始することしました。
「昔々あるところに……」で始まる昔話は誰もが馴染みの深いものでしょう。
「桃太郎」「金太郎」「浦島太郎」「花咲かじいさん」など、好きな昔話は人それぞれですね。
このような昔話や伝承、伝説は、長い時間をかけて語り継がれてきました。そんな昔話が舎人にもあります。
今回は
「昔々ある村に評判の美しい娘がおったそうな……」
から始まる舎人地域に伝わる昔話「毛長姫」について紹介します。
「長いくろかみが流れてきました。」と書いてありますが、女性の髪の毛でしょうか?川に流れてきたのでしょうか?
「毛長姫」とは一体どのような物語なのでしょうか?
23区最北端、足立区最古の街・舎人
まずは舎人(とねり)という街について、少しだけ紹介したいと思います。
東京都足立区の舎人は、東京23区の最北端に位置しています。
舎人(とねり)という難しい読みの地名さながらに、舎人遺跡など古墳時代前期の遺跡が数多く発見されている歴史の古い地域でもあります。
ハンターはタイルの画像をヒントに“舎人の川”に向かいました。
取材・調査を進めていくうちに舎人地域は元々湿地帯だったことがわかってきました。
それが江戸時代の灌漑事業によって、堀が多く作られ、現在のように荒川、中川、綾瀬川、新芝川などの利根川支流に囲まれるようになったそうです。
「日暮里・舎人ライナー」の終点「見沼代親水公園駅」で降りると、“足立区最古の村 舎人”と題されたショーケースに、この地域で発掘された出土品を見ることができます。昔から舎人に住んでいた住人は、水と上手く付き合いながら生活をしてきたのでしょうか?
「見沼代親水公園駅」から北に少し歩くと、川があります。
一見しても何の変哲もない川ですが、この川を越えると埼玉県草加市に入ります。この川があのタイルの舞台となります。
さてさて、では昔話をいたしましょう。
昔々、新里(にっさと)と呼ばれる村に心の優しい長者がいました。
長者には娘がいました。
やがて村でも評判の美しい娘に育ちました……。
「毛長姫」のあらすじとは?
堀を挟んだ舎人の里の長者にも評判の息子がいました。
世話をする人があって、年頃の2人は結婚することになりました。
堀を渡って、娘は舎人の里の長者の家に嫁入りをしました。
美男美女の夫婦ということで、まるでお雛様のようだと両方の村では大層評判になりました。
期待通りに誰もが羨むような楽しい毎日がつづきました。
しかし、数年後、原因はわかりませんが、突然娘は嫁ぎ先の両親と仲が悪くなってしまいました。
期待されていた子どもにも恵まれず、娘は毎日おもいが沈むようになりました。
美しかった容姿も、次第に衰えてゆき、村の人も心配するほどでした。
娘はこの苦しみを実家の両親に伝えようと思い、家を出ました。
しかし、足取りは重く、沼のほとりでかがんで思い詰めてしまいました。
どのくらい時が経ったでしょうか?思案してもよい考えは思いつかず、娘は沼に身を投げてしまいました。
娘の姿が見えなくなったので、両家は心配し、村人たちも必死で探しましたが、姿を見つけることができません。
それからというもの、長雨が降ると沼にはきまって、小山のような浪が荒れ狂いました。村人たちは、きっと娘がこの沼の主になったのだと思うようになりました。
それから数年経ち、数日つづいた暴風雨のあとに、3〜4メートルはあるかと思われる真っ黒い髪の毛が流れてきました。
村人はきっと娘のものだろうと、新里村の長者に届けました。長者は、娘が帰ってきてくれたと喜び、この髪をご神体として沼の主を祀りました。それ以来、沼で不思議なことは起こらなくなったそうです。
それ以来、この沼を毛長沼と呼ぶようになりました。
おしまい
(出典:舎人地域学習センターミニコミ誌「つくし」特別号「舎人の語り伝え」)
毛長姫の髪の毛は実在する!
沼に身を投げた娘こそが、「毛長姫」の正体でした。先述したように、以前の舎人一帯は湿地帯でした。沼なども多くあったことでしょう。そして、物語で出てくる“堀”こそが、現在の「毛長川」と言われています。
そして、なんと流れてきた黒い髪の毛は実在することもわかりました!
埼玉県草加市新里町の「毛長神社」のご神体が女性の髪の毛だと言うのです。
毛長神社のご神体は、女性の髪の毛……。
女性の髪の毛をご神体とする神社は全国でも非常に稀有(けう)とのことで、毛長姫との関係性は不明ながらも、“髪の毛にまつわるなにか”が過去にあったことは間違いなさそうです。
毛長川から住宅街に入ると、ポツリと建っている毛長神社。
女性の髪の毛がご神体というのは、少し穏やかではありません。毛長姫の怨念や悲しみを抑えるためのものなのでしょうか?
しかし、取材と調査を進めているうちに意外な事実がわかってきたのです!
>>後半へ続く…